杉山長谷夫作曲「出船」ピアノ教室CATピアノねこだよりのブログ

 

クラシック音楽としての日本歌曲? それとも歌謡曲?


杉山長谷夫氏が作曲した「出船」は、船が港を出港する情景と親しい人との別れる時の心境を表した日本歌曲です。

「出船」はユニークな曲です。

というのは、この歌を歌唱している歌手の方々がオペラ歌手だけではなく、流行歌を得意とする歌手であったり、演歌歌手であったりするからです。

YouTubeで「出船」を聴くことができる動画を探してみました。


藤原義江氏は、日本におけるオペラ、オペレッタの普及、クラシック音楽の大衆化に影響が大きかった浅草オペラの人気歌手でした。

浅草オペラは、大正時代の1917年から1923年の間、東京の浅草で上演されたオペラやオペレッタのことです。

彼は浅草オペラに出演していた頃は正式なクラシック音楽の教育を受けていませんでしたが、その後、イタリアに留学。数々のイタリアの地方小歌劇場に出演。1931年にはパリのオペラ=コミック座のオーディションにも合格しているそうです。日本のオペラ団体「藤原歌劇団」の創設者でもあります。

またオペラだけではなく、流行歌も歌っていて、年末恒例のテレビ番組である紅白歌合戦に出演しています。

紅白歌合戦は大晦日、日本のNHKで放送されている番組です。その年に人気のあった歌手が出演します。


藤山一郎氏は、1933年(昭和8年)に東京音楽学校声楽部(現在の東京藝術大学)を卒業しました。

東京音楽学校在学時より、歌謡曲をレコーディングしており、「藤山一郎」の芸名では流行歌、本名である「増永丈夫 Masunaga Takeo」では、クラシック音楽の声楽家、作曲家、指揮者として活躍しました。


美空ひばり氏は歌謡曲の国民的歌手ですよね。女性としては低い音域で歌っています。


美空ひばり氏と同世代の歌手、島倉千代子氏。透き通った声質に日本の演歌独特のビブラートであるこぶしがかかっているのが特徴です。


現役世代の歌手では、石川さゆり氏。この人も演歌歌手です。


ここに上げた方々は、NHK紅白歌合戦に出演経験があります。

その中で、クラシック音楽の正式な教育を受けた声楽家は、藤原義江氏と藤山一郎氏です。

世代的には、大正時代から昭和時代に活躍した方々です。


美空ひばり氏が歌手活動を開始した頃の1946年、1947年は、藤原義江氏も藤山一郎氏も現役で活躍されています。

美空ひばり氏はクラシック音楽の声楽家ではないですが、「テネシー・ワルツ」やイタリアの歌「帰れソレントへ」など色々なジャンルの曲を録音しています。1955年には作曲家、山田耕作氏のレッスンを受けています。

このことからも、クラシック音楽の歌手と歌謡曲の歌手、また日本人作曲家の作品がクラシック音楽なのか、それとも歌謡曲なのかといった違いは、あまりなかったと推察します。


ところで「出船」ですが、日本の音楽大学声楽科の入学試験の課題曲になっていたりします。

私も高校生の頃、声楽を学んでいる友人のピアノ伴奏でこの曲を弾いたことがあります。


どうでしょう?

ユニークな曲でしょう?

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